"サケマス養殖"支える札幌の町工場の技術 ロシアのウクライナ侵攻で売上がゼロに…「カザフスタン」で見出す新たな活路 亡き父の遺志継ぎ、奇跡のV字回復
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2026年06月10日
■サケ不漁の危機…日高地方で始まったマスの養殖試験
北海道日高地方のホテル「浦河イン」のレストランが提供する数々のメニュー。
髙橋智也記者
「大ぶりなトキシラズに海鮮丼、脂が乗っていておいしそうですね。ただ、日高地方にも海の異変による影響がじわり広がりつつあります」
サケなどの人工ふ化を手がける、日高管内さけ・ます増殖事業協会で、2026年から力を入れているのがマスの養殖です。
日高管内さけ・ます増殖事業協会 清水勝専務理事
「4年前からサケの漁獲数、回帰数が落ちていてどんどん漁獲数が下がっている状況。このまま下がっていくと、サケでは(漁業者らが)生きていけない。ここのふ化場で、卵から稚魚から幼魚から成魚までいたる一連の行程をできないか実証試験を始めた」
■水槽でふ化 自然に近い川の環境を再現
清流=沙流川などで育ったマスから、卵を丁寧に取り出し、「浮上槽(ふじょうそう)」と呼ばれる水槽でふ化させます。
その卵を網目模様のプラスチックに固定して、水の流れを調節。長さ1メートルほどの水槽に、自然に近い川の環境を再現するのです。
日高管内さけ・ます増殖事業協会 清水勝専務理事
「増殖も、養殖もふ化室があって池があって、飼育場が必要なんです。池とふ化室をひとつにしたのがこの入れ物。効率化ですよ」
海水温の上昇など、海の環境が目まぐるしく変わる中、水産物の安定供給を目指す養殖技術。これらの装置は、札幌の中小企業が生み出しています。
■札幌の町工場が誇る「サケマスふ化装置」とは
札幌市東区のプラスチック類加工会社「フラット合成」です。従業員は20人。アクリルや塩化ビニルなどの加工、販売を手がけます。
フラット合成 菅和成さん
「サケ・マス装置は意外とデリケート。雑菌とかの対策が必要で、隙間がないように」
これが会社自慢の「サケマスふ化装置」。浦河町の増殖事業協会と協力し、製造を続けて、もう40年以上。高いふ化率が強みです。
■90年ごろから旧ソ連へ輸出 ロシアでのシェア6割に
フラット合成 平村由佳社長
「道内では、大部分のふ化場で使用してもらっている。道外は一部東北と、ロシア、官民両方で使ってもらっている」
水産庁の依頼で、このふ化装置を1990年ごろから旧ソ連へ輸出。これをきっかけに、平村社長の父、創業者の西崎建夫さんは、国内の他、ロシアへ販路を広げていったのです。
フラット合成 平村由佳社長
「(父は)ロシア語しゃべれないのにすごいなって。ロシア全体で6割くらいまでフラット合成のふ化機器が入ったと聞いている」
創業者の熱意と技術力で、会社の売り上げも順調に伸びていました。
■ウクライナ侵攻と父の急死…売上1億円がゼロに
しかし…2022年。
ロシアがウクライナに侵攻。EU諸国などが経済制裁を科す中、日本もロシアへの輸出を禁止に。フラット合成も取引を停止せざるを得ませんでした。
フラット合成 平村由佳社長
「(売り上げが)1億ぐらいはロシアであった。だからそれが2023年からゼロになってしまったので、会社としてもかなり厳しい」
さらに同じ年、ロシアとパイプを築いていた父・西崎さんが誤嚥性肺炎のため急死したのです。
日ロ関係の行く末を、最後まで案じていたといいます。
フラット合成 平村由佳社長
「亡くなる30分前、午後1時半くらいですかね。父の呼吸器を取ったら『サケマス』と言って手を伸ばした。(ロシアから)追悼のメールはすごく届いた」
■ロシア語圏の「カザフスタン」へ!新市場の開拓
予測不能な国際情勢に翻弄されたフラット合成の海外事業。しかし、残されたメンバーは、ピンチをチャンスに変えようとしています。
フラット合成 今アレクサンドラさん
「こちらがカザフスタンに出荷する検卵機。生きている卵と死んでいる卵を分別する機械」
ロシア生まれで、小学校から北海道で育った、今アレクサンドラさん。
西崎さんとともに、ロシア市場を開拓してきた1人です。
フラット合成 今アレクサンドラさん
「もしかしたら同じロシア語を公用語としている中央アジアで、新しく事業をする可能性があるのか…2023年ごろから可能性を調査してきた」
■国際情勢を超えて 世界へ広がる北海道の技術
今、力を入れているのは、北海道から5000キロ離れたカザフスタン。
中央アジアに位置する内陸国で、日本の7倍の国土を持ちます。
人口が増え続けているカザフスタンは今、国を挙げて養殖漁業に取り組んでいて、フラット合成の技術に、強い関心を示しています。
あの自慢のふ化装置も、既に24台を納品。さらに2026年6月、新たに6台を輸出します。
フラット合成 今アレクサンドラさん
「紛争でそれ(海外展開)が途絶えてしまうのは、とても残念なこと。北海道のサケマス技術を生かせるのであれば、全力でこれからやらなければいけない」
北海道の企業が持つ、食を守る確かな技術。国際情勢の荒波を乗り越えて、世界に広がろうとしています。
北海道日高地方のホテル「浦河イン」のレストランが提供する数々のメニュー。
髙橋智也記者
「大ぶりなトキシラズに海鮮丼、脂が乗っていておいしそうですね。ただ、日高地方にも海の異変による影響がじわり広がりつつあります」
サケなどの人工ふ化を手がける、日高管内さけ・ます増殖事業協会で、2026年から力を入れているのがマスの養殖です。
日高管内さけ・ます増殖事業協会 清水勝専務理事
「4年前からサケの漁獲数、回帰数が落ちていてどんどん漁獲数が下がっている状況。このまま下がっていくと、サケでは(漁業者らが)生きていけない。ここのふ化場で、卵から稚魚から幼魚から成魚までいたる一連の行程をできないか実証試験を始めた」
■水槽でふ化 自然に近い川の環境を再現
清流=沙流川などで育ったマスから、卵を丁寧に取り出し、「浮上槽(ふじょうそう)」と呼ばれる水槽でふ化させます。
その卵を網目模様のプラスチックに固定して、水の流れを調節。長さ1メートルほどの水槽に、自然に近い川の環境を再現するのです。
日高管内さけ・ます増殖事業協会 清水勝専務理事
「増殖も、養殖もふ化室があって池があって、飼育場が必要なんです。池とふ化室をひとつにしたのがこの入れ物。効率化ですよ」
海水温の上昇など、海の環境が目まぐるしく変わる中、水産物の安定供給を目指す養殖技術。これらの装置は、札幌の中小企業が生み出しています。
■札幌の町工場が誇る「サケマスふ化装置」とは
札幌市東区のプラスチック類加工会社「フラット合成」です。従業員は20人。アクリルや塩化ビニルなどの加工、販売を手がけます。
フラット合成 菅和成さん
「サケ・マス装置は意外とデリケート。雑菌とかの対策が必要で、隙間がないように」
これが会社自慢の「サケマスふ化装置」。浦河町の増殖事業協会と協力し、製造を続けて、もう40年以上。高いふ化率が強みです。
■90年ごろから旧ソ連へ輸出 ロシアでのシェア6割に
フラット合成 平村由佳社長
「道内では、大部分のふ化場で使用してもらっている。道外は一部東北と、ロシア、官民両方で使ってもらっている」
水産庁の依頼で、このふ化装置を1990年ごろから旧ソ連へ輸出。これをきっかけに、平村社長の父、創業者の西崎建夫さんは、国内の他、ロシアへ販路を広げていったのです。
フラット合成 平村由佳社長
「(父は)ロシア語しゃべれないのにすごいなって。ロシア全体で6割くらいまでフラット合成のふ化機器が入ったと聞いている」
創業者の熱意と技術力で、会社の売り上げも順調に伸びていました。
■ウクライナ侵攻と父の急死…売上1億円がゼロに
しかし…2022年。
ロシアがウクライナに侵攻。EU諸国などが経済制裁を科す中、日本もロシアへの輸出を禁止に。フラット合成も取引を停止せざるを得ませんでした。
フラット合成 平村由佳社長
「(売り上げが)1億ぐらいはロシアであった。だからそれが2023年からゼロになってしまったので、会社としてもかなり厳しい」
さらに同じ年、ロシアとパイプを築いていた父・西崎さんが誤嚥性肺炎のため急死したのです。
日ロ関係の行く末を、最後まで案じていたといいます。
フラット合成 平村由佳社長
「亡くなる30分前、午後1時半くらいですかね。父の呼吸器を取ったら『サケマス』と言って手を伸ばした。(ロシアから)追悼のメールはすごく届いた」
■ロシア語圏の「カザフスタン」へ!新市場の開拓
予測不能な国際情勢に翻弄されたフラット合成の海外事業。しかし、残されたメンバーは、ピンチをチャンスに変えようとしています。
フラット合成 今アレクサンドラさん
「こちらがカザフスタンに出荷する検卵機。生きている卵と死んでいる卵を分別する機械」
ロシア生まれで、小学校から北海道で育った、今アレクサンドラさん。
西崎さんとともに、ロシア市場を開拓してきた1人です。
フラット合成 今アレクサンドラさん
「もしかしたら同じロシア語を公用語としている中央アジアで、新しく事業をする可能性があるのか…2023年ごろから可能性を調査してきた」
■国際情勢を超えて 世界へ広がる北海道の技術
今、力を入れているのは、北海道から5000キロ離れたカザフスタン。
中央アジアに位置する内陸国で、日本の7倍の国土を持ちます。
人口が増え続けているカザフスタンは今、国を挙げて養殖漁業に取り組んでいて、フラット合成の技術に、強い関心を示しています。
あの自慢のふ化装置も、既に24台を納品。さらに2026年6月、新たに6台を輸出します。
フラット合成 今アレクサンドラさん
「紛争でそれ(海外展開)が途絶えてしまうのは、とても残念なこと。北海道のサケマス技術を生かせるのであれば、全力でこれからやらなければいけない」
北海道の企業が持つ、食を守る確かな技術。国際情勢の荒波を乗り越えて、世界に広がろうとしています。